はちゅウるい館の出口にあるこちらの箱をご存じでしょうか。
木枠と網で作られたこちらの「謎の箱」!みなさん足を止めて覗いていますが「なにもいない」と言っては立ち去っていきます。

こちらの箱は「蛙池」といって飼育員お手製の展示場です。
中には市内でよく見られるニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル、ニホンアカガエル、トウキョウダルマガエルの4種類のカエルの仲間がいます。

アマガエル アオガエル

アカガエル ダルマガエル
「なにもいない」と言われてしまうのには理由があります。
この展示場はカエルを「見られる」のではなくカエルを「探せる」をコンセプトにしています。中には自然の植栽(要するに雑草)、石、倒木、植木鉢など自然界でカエルが隠れるのに利用しているものがわんさか入っています。もちろん水場もあり、その中にもブロックやガマ(水草)など隠れ家があります。
動物園や水族館は動物を見せる場所であり、そのようにデザインされているのが基本です。しかし、蛙池ではそもそも見せる気がないので「なにもいない」ということになってしまうのです。

「なにもいない」=「残念」ということでもありません。生物好きにとって「探す」「見つける」ということは、子どもから大人まで夢中にさせる何とも言えない魅力があります。見えないからこそ見たい!誰よりも先に見つけたい!展示されている動物を見るよりも自分で探して見つけたときの方がその人にとってより強く印象に残ります。窓が近いので館内で作業をしていると蛙池を見ているリアクションが伝わってきます。「いないね」で終わることもありますが、その続きで「悔しいから絶対見つける」「どっちが先に見つけるか勝負しよう」「こういうのむきになっちゃうんだよ」「いたーーー!」などなどたくさんの声が聴こえてきます。

また、蛙池でカエルを探しているとダルマガエルが水の中にいるのに対して、アカガエルは草地、アマガエルは高い場所などカエルによって利用する場所が違うことがわかります。図鑑やインターネットを見れば簡単に分かりますが、実際に探す、見つけるという体験から得られたものと果たして同じでしょうか。

蛙池で見られたダルマガエルの包摂(交尾)
動物園は動物を見せて楽しませるだけでなく、野生動物や地球環境のために寄与していくという世界共通の大きな目的があります。まずは身近な自然、足元の自然を大切にする心を育むことがその一歩だと思います。蛙池でカエルを見つけることができれば自然の中でもカエルを見つけることができるのです。もう探し方と見つける楽しさを知ってしまったのですから。
4種類のカエルと地球の未来が詰まった素敵な箱をぜひお楽しみください。
生き物探しの前の場所探しからすでに楽しい 中本
