日立市かみね動物園公式ブログ

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ZSJ創刊記念シンポジウムが開催されました


 茨城大学(農学部)、千葉市動物公園、そして当園による3機関連携の動物園学紀要「ZOO SCIENCE JOURNAL」(以下、ZSJ)創刊を記念したシンポジウムが、3月25日(月)、茨城大学農学部で開催されました。

小針准教授による趣旨説明

 当園と茨城大学農学部は、地域にある大学と動物園が連携して調査研究できないかということで様々なテーマのもとにこれまで共同研究を行ってきました。ただ、どうしても能動的な調査や報告書作成などは大学側が中心となり、動物園側はサンプル提供や研究環境の構築などに費やされるにとどまっていました。

 また、動物園では様々な飼育方法や健康管理等において十分な知見を広げているにも関わらず、日々の多忙な飼育・来園者業務などから、それらを科学的に記録し後世へ残すという作業がおろそかになるきらいがありました。共同研究を続ける中で、中心となった大学側の小針准教授もそうした状況は認識しており、そうした知見が埋もれることが勿体ないのではと感じていたそうです。そこで、いろいろ話し合い、それならそんなに敷居を高くせず動物園側でも論文を書く勉強のつもりでやってみようかということが、今回の紀要創刊という企画へつながったということになります。また、論文化した以上は活用されなくては意味がない、ということで誰もが読めるオープンアクセス方式や飼育員全員の年間の活動報告も掲載したことが特徴的な仕様になります。

 より詳しい経緯や論文などは文末にアクセス可能なURLを掲載していますのでそちらを参照頂きたいと思いますが、ZSJ創刊を記念したキックオフイベントをやろうということで、今回のシンポジウム開催の運びとなりました。

村田会長による基調講演

 当日は大学側に場所を提供頂き、学内の講義室で13時から開催されました。冒頭、発案者である小針准教授の趣旨説明の後、基調講演として(公社)日本動物園水族館協会の村田会長より動物園における研究の意義と題して、ヨーロッパにおける動物園の歴史的な俯瞰から研究の重要性に言及頂きました。その後、大学側から北野教授による遺伝子の多様性研究を軸に動物園での研究利用の利点を、当園からは川瀬獣医師が現場経験を踏まえた記録化の重要性を、そして千葉市動物公園の中山研究員からは、記録された動物園の知見を市民へ伝えることの大切さなどをそれぞれお話し頂きました。

北野教授による講演

 また、最後には総合討論として小針准教授がコーディネイト役となり、発表者全員に登壇頂き、発表で伝えきれなかったことや会場からの質疑なども交え、熱気のこもる討論が行われ、実りの多いシンポジウムは16時過ぎに幕を閉じました。

全員登壇による総合討論

 今回、初めての取り組みであり、当園の飼育員も慣れない論文作成に悪戦苦闘の様子でしたが、幾度もの校正作業を経て活字化される中で、皆一様に達成感を味わえたのではないかと推察しています。また、論文を書くことで、より科学的な目を養うこともできると思うので、今後もこの紀要だけではなく、動物の飼育・健康管理の記録化を期待したいと思います。

 最後に、村田会長はじめ今回のシンポジウムで発表された皆様、そして参加頂いた聴衆の皆様、スタッフの皆様、千葉市動物公園様に心よりお礼申し上げるとともに、改めてプロジェクト全体の中心的役割を担っていただいた小針先生(普段先生と言ってるので、最後だけお許しください)に心より感謝申し上げます。

※ZSJはコチラから

https://dklabo.wixsite.com/izsh/zoo-science-journal

(後日、当園のHPからもアクセスできるようにします)

(園長 生江信孝)