バリアフリーを考える
急な坂はまだあるものの、なるべくバリアフリーな動物園に。ということでここ数年少しずつ改修が進んでいるかみね動物園。
そんな中、サルの楽園の獣舎内でも、バリアフリー化を少しずつ進めています。
事の発端はブラッザグエノンのピットくん♂。
(ピット♂ 御年33歳)
寝室にある木を登りづらそうにし始めました。数日様子を見ていましたが、やはり寝室から展示場に出ていくのが大変そう。飼育下では約30年が寿命といわれているブラッザグエノン。ピットくんは今年33歳になる立派なおじいちゃんです。
少し心配な点もいくつかあったため、健康診断をしました。
結果は、全身の関節に問題あり、心臓の肥大が確認されました。
関節に関しては以前の健康診断で分かっていたことであり、歳を取ると腰や背骨が曲がってしまう人間と同様の症状でしたが、前回よりも心臓が大きくなっているというのは少し心配な結果でした。
獣医師からは心不全を防ぐ薬を処方され、現在投薬しながら状態を見ています。
その後、隣の展示場に引っ越しをするタイミングでサバンナモンキーも健康診断をしました。
メスのサナちゃんは今年23歳。オスのケビンくんは当園に来園した際の正確な年齢が分からないのですが、来園時の推定年齢から考えると17歳ぐらい(歴代担当者たちはもっと年齢いってるんじゃないかと疑っています)。サバンナモンキーの飼育下での寿命が20年~30年だと言われているので、2頭とも良い年齢と言えます。
(ケビン♂)
サナちゃんに関しては健康状態良好でしたが、ケビンくんは以前から歯が悪く、今回も1か所抜歯をし、こちらも心臓の肥大を確認したので、ピットくん同様に心不全を防ぐ投薬が始まりました。
(余談:ピットくんもケビンくんも最近薬を嫌がるようになり、ごまかして投薬する担当者と見つけ出して吐き出すおじいちゃんズの攻防戦が繰り広げられています…。)
何ができる?
さて、心臓に負担を抱えた2頭のおじいちゃんたちが楽に過ごせるように飼育者として何ができるのか。
食事内容の改善、心臓に負担のかからない寝室や展示場、驚かせないようにする。
いろいろありますが、まずは日々過ごす寝室をより過ごしやすいように改善しました。
(ビフォーを撮り忘れていたので見づらくてごめんなさい!)
ブラッザグエノンの場合。
以前は難なく登っていたこの木。この木をつたってシュート(展示場に出るまでの通路)に上がりますが、ここが一番つらそう。体力的にも心臓にも負担がかかっているのでは?ということで、木を使ってはしごを作製し、今までより傾斜を緩やかにしました。
展示場から戻ってきた際は、なんだこれ?というような顔をしていましたが、思ったよりすんなりと使用してくれて、大変そうなそぶりも見えなくなったので一安心です。
(すんなり使ってくれています)
その後、床から上に上がるはしごを着けましたが不評。頑張ってでも使いづらそうな木を使って上がっていく日々。設置場所を変更して今は以下の状態に。ここはそこそこ使ってくれていますが、まだ100%使いやすいというわけではなさそうです。
サバンナモンキーの場合。
展示場を移動する関係で、寝室も1つ隣に移動しました。しかしながら、こちらもなんだか使いづらそう…。
上の平板に上がるのが大変そうだったので、はしごと木の枝を追加。しばらくは怪しんでいましたが、こっちの方が登るのが楽というのを覚えたのか、今では上手に使ってくれています。
サルの楽園の獣舎は、高い所に難なく登れるサルだからこその構造ではありますが、登れなくなったら自身で展示場に出られないというデメリットもあります。
人間のバリアフリー基準には到底及ばないつくりですが、今後も老齢個体の体力や体の動きをよく観察しつつ、負担が少ないように改良していこうと思っています。
(自身もひしひしと歳を感じる ところ)