日立市かみね動物園公式ブログ

太平洋の見える動物園!

当園のキリンの家系について


先日、宇都宮動物園で開催された関東東北・北海道ブロック動物園飼育技術者研修会に参加しました。研修会の参考資料の中に宇都宮動物園のベテラン飼育員さんが作成した宇都宮動物園のキリンの家系図が目に入りました。当園のキリナは宇都宮動物園をルーツに持つ個体でしたので家系について興味がわきました。そこで、疑問が浮かんだことが2つ。

1つ目は、当園にキリンの家系図がないこと。近年は現在のペアで4頭の子どもに恵まれ、繁殖が順調なので家族や家系という言葉が当てはまります。家系図を作り、家族構成を知るきっかけになればと思いました。

2つ目は、キリンの祖先はどこまでさかのぼれるのか?でした。人に祖先がいるように、キリンにも祖先がいます。ここでの祖先とは、野生の個体ということです。

日本で一番初めにキリンの飼育を行ったのは、100年以上前の1907年で、場所は上野動物園です。当園では、1969年にキリンの飼育が始まりました。この年は、キリンやサイがいるエリアが拡張オープンした年です。この時にやってきたのが、多摩動物園から多摩太郎♂と徳島動物園からタカコ♀です。残念ながら最初にやってきたキリンは繁殖に至らず、現在飼育している個体とは家族関係はありません。

 

現在いる個体をベースとし作成した家系図がこちらです。

父方

・シゲル♂2004年九州アフリカサファリで生まれ、2009年に当園へ移動しました。5歳での移動は珍しかったのかなと思われ、体格も小柄です。物怖じしない性格で、飼育員としては非常に助かる存在です。

・父アメオ♂は、1995年にアメリカ合衆国で生まれ、1997年に九州アフリカサファリへ移動してきました。両親は詳細不明です。

・母ミズキ♀は、1994年に九州アフリカサファリで生まれ、両親は多摩動物園から移動してきたユタロウ♂と宮崎サファリ(1986年閉園) から移動してきたミヤコ♀です。

・ユタロウ♂は、1988年に多摩動物園で生まれ、両親は野生出身(野生個体)のフジ♂とユウガオ♀です。

・ミヤコ♀は、1987年に宮崎サファリから九州アフリカサファリへ移動してきました。両親や生まれた場所は詳細不明です。

 

母方

・キリナ♀は、2009年桐生市桐生が岡動物園で生まれる。2011年に当園へ移動しました。

名前の由来は、当時の桐生が岡動物園のキリン担当の斎藤さんから伺っていて、桐生(キリュウ)の【キリ】と9番目の子ども(ナイン)の【ナ】からキリナと名付けたそうです。4頭の子どもを育てあげ、立派なお母さんキリンです。

・父サクタロウ♂は、1990年に多摩動物園で生まれ、1993年に桐生が岡動物園へ移動してきました。両親はフジ♂とサクラコ♀です。

・フジ♂は、野生由来の個体です。シゲルの家系にも登場した個体で、多くの子孫を残し、日本のキリンの繁殖に大きく貢献した個体です。

・サクラコ♀は、1975年に多摩動物園で生まれ、両親は野生由来のタカタロウ♂とタマザクラ♀です。

 

・母キサラギ♀は、1991年に宇都宮動物園で生まれ、1993年に桐生が岡動物園へ移動してきました。9頭もの子供を育てた偉大な母キリンです。子育て上手はキリナも受け継ぎました。両親はゼン♂と野生由来のハナコ♀です。

・ゼン♂は、資料によって、野生由来や宮崎サファリから移動など違いがあるので、もう少し調べてみます。

ハナコ♀は。野生由来の個体で、1974年に宇都宮動物園へ移動してきました。ハナコも10頭出産した子沢山のキリンです。

 

シゲル♂とキリナ♀の子ども

シゲキ♂2014生まれ、2016年にゾウの国へ移動しました。名前の由来は、父シゲルの【シゲ】と母キリナの【キ】でシゲキです。来園者による名前の公募によって決まりました。シゲキは残念ながら2022年に亡くなっています。

ルリカ♀2018年生まれ、2020年に桐生市桐生が岡動物園へ移動しました。名前の由来は、父シゲルの【ル】と母キリナの【リ】でかみね動物園の【カ】でルリカです。

クルミ♀2020年生まれ、2023年に伊豆アニマルキングダムへ移動しました。名前の由来は、9月30日生まれで、この日はクルミの日です。ここからクルミにしました。

ナツネ♀2022年生まれ、現在も当園で両親といます。名前の由来は、8月1日の夏生まれの【ナツ】とかみね動物園の【ネ】でナツネです。来園者による名前の投票によって決まりました。

 

長々と書いてしまいましたがいかがでしたでしょうか。現在当園にいるキリンの家系図からわかるように記録がある個体だけでも19頭のキリンがいることがわかりました。それぞれ命をつなぎ今があります。とても感慨深いです。

祖先については、現在の子ども世代から数えて3~4世代遡ると野生個体だということがわかりました。(現在は保護動物を除き野生個体が動物園に来ることはありません)

イメージとしては、5~6世代かなと思っていましたが、意外と野生個体が身近にいることを感じました。

 

今後

当園には現在の家系以外にも9頭のキリンがいたことがわかっています。多摩太郎♂タカコ♀タカイチ♂高絵♀ミキ♀ハヤシン♂ノブゴ♂サファリ♀ナミト♂キリコ♀。過去当園にいたキリンについても調べ、家系図を作成し皆さんにお見せできればと思います(来年度キリンの担当だったら)。子供のころに見たキリンは○○さんだったんだなーとか声が聞こえてきたらうれしいです。

ではでは、

 

ちなみに余談ですが、私のご先祖を調べたところ、江戸時代から明治時代に人力車の車夫をしていて、走りまわっていたそうです。残念ながら途中で養子の方がいまして、車夫の方の血は受け継いでいませんが、なかなか調べてみると面白いなと思いました。

(飼育員 なかむら)